Vol 15. 2月末はヨーロッパ周遊のシーズン

Vol 15. 2月末はヨーロッパ周遊のシーズン

例年この時期は1ヵ月くらいかけてヨーロッパ周遊するのがライフワークだった。

バルセロナで開催されるMWCに出席するためだ。バルセロナに1週間滞在して、その後はヨーロッパ各地を回る。当社の欧州拠点に行ったり、MWC参加企業とアポを取り付けて売り込みかけたり、オランダにある私が理想と崇める会社を用も無く訪問したり、パリやケルンの会合に参加したり、、、と約1ヵ月かけて帰国する。

気候的には肌寒くて、あまり良いシーズンでは無いが、チャンピオンズリーグ真っ最中なので、海外サッカー好きとしては最高のシーズンではある。毎年、2~3マッチは観に行っていた。

しかし、2020年まで8年続いた欧州行脚も、昨年はMWCが完全リモートとなり、今年は開催されるが渡航を自粛した。このイベントを通して、モバイル業界のテクノロジーやトレンドを肌で感じてキャッチアップするだけでなく、マインドもリフレッシュして、事業計画とは別軸の「ビジネスネタ帳」をアップデートする、という年1の貴重行事だっただけに、この時期に大人しくタイに居留まるのは、なんか調子が狂う。

 

MWC(モバイル・ワールド・コングレス)

MWC(モバイル・ワールド・コングレス)は、携帯キャリアの次世代通信規格や周辺技術、基地局・スマホメーカーの新製品発表など、モバイル関連の総合見本市だ。最近では上海やL.Aでも開催されるようになったが、このスペイン・バルセロナで開催されるMWCが規模も世界一で、モバイルテクノロジー新潮流の震源地だ。会期中に合わせてビッグなプレスリリースを競い合うのも面白い。

また、バスで20分くらい行った別会場で、4YFNという姉妹イベントが開催されている。これがまた面白い!4YFNは、4 Years From Nowの頭文字を取ったもので、その名の通り、4年後にはMWC本会場で話題の中心になるだろう激アツ新興ビジネスの見本市だ。ここで行われるスタートアップのピッチコンテストがレベル高くて、これまためちゃくちゃ面白い。

ここ最近は、4YFNの方にもっと時間の比重を掛けたいのだが、本会場だけでも広大すぎて期間中に全て回り切るのは至難の業だ。また、途中でアポも15分刻みで入るので、効率的な行動計画は渡航前の重大業務だ。ディズニーフリークがアトラクションやらパレードやらを効率良く回る段取りを極めたい、という気持ちが今なら良く分かる。自分にとっては、MWCは1番のアミューズメントパークだ。

 

年1交流の交差点

世界各国からこの業界に身を置くキーマンたちが、この1週間はバルセロナに集結する。近くの東南アジアや中国の人たちや、タイや日本の人さえも、バルセロナで年1回だけ会う人も多い。というのも何か変な感じだが、それがMWCだ。このイベントが良い集合場所になっている。

今年のMWCは、特にメタバース周りのブロックチェーンやNFTらへんのキーワードが色めきだっている。ここ最近は、スマホメーカーだけで無く、自動車メーカーや、家電メーカーの出展も目立つ。通信業やIT業、という括りは早晩無くなるだろう。モバイル含めた通信・IT環境は完全に基礎インフラとなった。MWCに毎年出展している会社でも、ど真ん中の通信畑の割合は減ってきた印象はあり、それもまた時代の流れだろう。

 

初年のビジネスネタ帳

バルセロナ帰りで、アフリカや中東に立ち寄ることもある。ヨーロッパを周遊するときは、電車での移動が風情があって好きだ。しかし、初めの数年は、現場を空けられないので、泣く泣くバルセロナの単純往復でMWCに参加していた。

世界中を移動しているときにも普段と変わらないパフォーマンスの仕事ができればいいのに、、、

ネット環境とPCさえあれば、すぐにオフィスに戻れるような、まさにどこでもドアの世界が創りたい。「ボーダレス通信」「ウェアラブルHotSpot」「パーソナルWiFi」という言葉を2013年に初めてバルセロナに行った時のビジネスネタ帳に記していた。奇しくも、コロナ禍でテレワークとか、ワーケーションという言葉で陽の目を見たコンセプトだ。

そんな着想から数年かけて生まれたサービスが、ボーダレスWiFi「Skyberry」だ。
簡単に言うと、空港でSIMを入れ替えるのを自動で遠隔で出来る仕組みで、世界90か国でローミングの無い世界を実現したサービスだ。

 

あったらいいな、から始まった「Skyberry」で創りたかったボーダレスな世界

Skyberryの要素技術はクラウド SIMと呼ばれ、この技術を最初に目の当たりにしたときには惚れ込んだ。ローカルSIMのプロファイルを降らせること自体は技術的には可能で、自分はマルチIMSIという技術レイヤーでのアプローチを志向し、研究していた。しかし、クラウドSIMを見た時には、あ、これだ、とマン振りした。そして、クラウドSIMの自社サーバー運用体制を敷いて、Skyberryというサービスを産み出した。

このクラウドSIMテクノロジーも、最終的に提携したベンダーも、最初の出会いはMWCだった。その後は、雨後の筍のように、この仕組みを使ったベンダーや派生サービスが生まれた。

ボーダレスな世界を体現するためにも、Skyberryを持ってヨーロッパ出張に行き、1ヵ月離れようが変わらないパフォーマンスで仕事できることを自ら証明してきた。世界中を転々としながら仕事をするスタイルは、まさに描いていた理想の生活スタイルに近付いた瞬間だった。

▶「Skyberry」はこちら
(タイ公式)https://th.skyberry.me/
(日本公式)https://jp.skyberry.me/

 

戦争はやめてくれ

ヨーロッパの西側は行き尽くしたので、直近年は、ドイツからオーストリアに抜けて、ハンガリー→スロバキア→チェコ→ポーランドを経由して帰ってきた。この辺は、シェンゲン協定内なので、国境を跨いでもパスポートチェックは無いものの、ユーロは使えず自国通貨を用意する必要がある。また、だんだんとポーランドに近付くにつれ、西側ヨーロッパとは異質のロシアっぽい空気感が漂い出してくるのだが、それも異国情緒があって旅情を掻き立てられた。ポーランドではロシア語話者も未だ存在する。あまり知られていないが、東欧諸国にはスマホメーカーもあり、ITも盛んだ。WhatAppが生まれたのもウクライナだ。次は、ウクライナで集合しようと言う話があって、バルト三国からベラルーシ、ウクライナに抜けるルートを計画していたところだった。

ロシアがウクライナ侵攻を開始した。バルト三国がNATOに加盟してからは、ウクライナが緩衝地帯として地政学的に可哀そうな立場にあった。ロシアが、クリミアやドンバス地域を実効支配に至るまで侵攻をやめず緊張は続いていたものの、正直、ここまで過激化するとは思っていなかった。

今世紀最大の戦争が始まってしまった。
ウクライナ市民の平和を脅かす軍事行動は即座に止めて欲しい、と切に願う。

 

最後に

この戦争により、パンデミックの終焉を待たずに、また新たな混沌の時代に突入した。少なからず物価や経済、人々の行動に影響は出てくるだろう。メタバースの世界がエンターテイメントや消費活動の場として主流になる時代を後押ししている予兆すら感じる。

息子たちが自分の歳になったときに、こんな会話をしているかも知れない。

「令和の初期までは居酒屋ってものがあって、外でわざわざ会いに行って飲み会やってたんだって、信じられないねー。家に居ながら参加すればウィルスに罹る心配も無いし、爆撃が飛んでくることも無いし、地球環境にも優しいのにね。そもそもメタバースでもない現実世界で、何もせず酒飲んで話してるだけ、ってありえなくない?」

外部の人との談笑は、ゲームをしながら、遊園地を散歩しながら、タケコプターで世界を浮遊しながら、宇宙船の中から、、、共通のバーチャル空間の中で、という世界観だ。

嫌だ、そんな世の中。。。

まさにそこに向かう技術の展示会が始まるので、居酒屋派として注視しておきます。私は、NTN(Starlinkを代表とする衛星通信サービス)と超短波融合の次世代通信、Web3.0の非中央集権的なネットの世界、データの民主化、脱GAFA、、、この辺が注目しているトレンドです。今年のMWCは、予定通り来週28日に開幕されるので、タイからウォッチしておきます。

 

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