タイのパトカーが充電しているのを見かけてタイでも電気自動車が増えてきているのだなと実感しました。
今回は電気自動車をご紹介します。
1.電気自動車とは?
既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、電気自動車(でんきじどうしゃ、electric vehicle)とは、電気をエネルギー源とし、電動機(モーター)を動力源として走行する自動車です。
EVと言う略称が一般的に用いられています。内燃機関(ICE)を持たない事から、走行中にCO2やNOxの排出が無い、ゼロエミッション車が電気自動車です。
電気モーターを動力源とする電気自動車は、車載電池から電力を得る電池式電気自動車と、走行中に電力を外部から供給する架線式電気自動車とに大きく分けられます。
電池式電気自動車は、外部からの電力供給によって二次電池(蓄電池)に充電し、電池から電動機に供給する二次電池車が一般的です。
車両自身に発電装置を搭載する例としては、太陽電池を備えたソーラーカー、燃料電池を搭載する燃料電池自動車があります。
発電専用エンジン(レンジエクステンダー)を搭載する物については、内燃機関と二次電池を併用する事からプラグインハイブリッドカーに分類されます。
電池を用いた方式は構造が単純であるため、自動車の黎明期から今日まで遊園地の遊具、フォークリフト、ゴルフカート等に多く使用されています。
日本では東京都中央卸売市場などで運搬に利用される、ターレットトラックでもその数を増やしています。
しかし、従来の二次電池は、出力やエネルギーあたりの体積と質量が大きく、コストも高く、寿命も短いという欠点があります。
また、急速な充電を避ける必要もあり、稼働時間に対し充電時間も長くなってしまうという面倒な代物となっていて、その為に交通機関の主流にはなれませんでした。
近年、出力・エネルギー密度が高く、繰り返しの充放電でも劣化の少ないリチウムイオン二次電池の発展により、電気自動車が注目されています。
架線式電気自動車としては、架線(架空電車線)に接触させて電源を得る方式はトロリーバスとして古くから用いられている他、架線を地下に埋設して、誘導電流によって走行中に充電できるオンライン電気自動車等があります。
世界各国で環境問題への関心が高まる現在、環境に優しい電気自動車は「次世代カー」として世界中の注目の的です。
日本でも2010年12月に発売された日産「リーフ」を皮切りに、主要メーカーが電気自動車の開発に力を注いでいます。
2.電気自動車のメリット
電気自動車では以下のメリットが挙げられます。
1. 環境にやさしい
電気自動車は環境にとても優しい車として知られています。
電気自動車がなぜ環境に優しいのか、それは排気ガスによる大気汚染がないからです。
ガソリンやディーゼルは、エンジンを動かす際に汚染物質を含んだ排気ガスを出します。
イギリスやフランスは、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針です。
その他にも、大気汚染が深刻な中国、環境先進国ノルウェーなど多くの国が、電気自動車の導入を積極的に行っています。
2. コスパが良い
電気自動車のメリットとして、コスパの良さもあげられます。
どちらも100km走行した場合にかかるガソリン代または電気代です。
ガソリン車…ガソリン145円/L・燃費16km/Lと仮定100km÷16km/L×145円/L=906円
電気自動車…電気料金(昼)30円/kWh・1kWhあたり6km走行と仮定
100km÷6km/kWh×30円/kWh=500円
上記の結果、電気自動車のコスパは確かに良いとわかります。
さらに電気自動車の場合、深夜電力の利用や電気の契約プランの見直しや、自宅へのソーラーパネルの設置による自家発電の利用等により更なるコストダウンが図れる可能性があります。
3. 加速がスムーズ
電気自動車はガソリン車より加速がスムーズだと言われています。
なぜ、電気自動車の加速はスムーズなのでしょうか。
その理由は、電気自動車は回転のし始めから高出力による最大トルクを発生させる事が可能だからです。
ガソリン車の場合はギアを使って徐々に加速させていく為、発進時から最大トルクを出すことはできませんが、電気自動車はアクセルの踏み込み次第で任意のトルクを発生させる事が可能になります。
4. 音が静か
走行時の音が静かで振動が少ない点も、電気自動車のメリットです。
ガソリン車の場合はエンジンでガソリンを燃焼させているので、どうしても音や振動が発生してしまいます。
電気自動車の場合、燃料はバッテリーに蓄えた電気ですので、振動はエンジン(モーター)が主な振動源になりますので、電気自動車の方が通常の自動車と比べて音も静かで振動が少なくなるのです。
5. いざという時の発電機になる
電気自動車はいざという時に自動車に貯めておいた電気を利用する事が可能です。
自宅にソーラーパネルや給電システムを設置しておけば災害時でも利用できますし、ガソリンを必要としないのでいざという時にはすぐに利用可能となります。
6. 減税や補助金が受けられる
電気自動車を日本で購入する場合、自治体によって減税や補助金が受けられる場合があります。
これは政府の方針によるもので、電気自動車の他にもハイブリッド(HV)やプラグインハイブリッド(PHV)等、環境性能に優れた車に適用されます。
エコカー減税やグリーン化特例、エコカー補助金など、様々な恩恵があることを思えば、電気自動車の人気が高まっているのも納得です。
3.電気自動車の補助金と自動車税
電気自動車関連の補助金で一番金額の大きいもの、すなわち重要なものは、次世代自動車振興センター(NEV)のクリーンエネルギー自動車補助金で、毎年の国の予算で補助が受けられるものです。
日本では車両を購入して登録(=ナンバープレートを付ける)してから補助金交付申請書を提出し、NEVで審査後、補助金は指定した銀行の口座に振り込まれます。
このNEVの補助金には車両の保有義務というのが定義されており、補助金を利用して車を買うと、その車を4年間、売ったりすることができなくなります。
4年間の車の販売は不可になりますが、補助金を受けられるのはウレシイですね!!
税金、自動車税(県税)・軽自動車税(市町村税)はどうなるかと言うと、この自動車税は毎年かかる税金で、毎年支払う必要がありますが、自動車の排気量によって決まります。
例えば日産リーフはエンジンがありませんから排気量はゼロですよね?
排気量1リットル以下は1年間29,500円となっていますから、この金額となります。
ただし、自動車税は平成32年度燃費基準を20%以上上回っている、もしくは次世代自動車の場合、75%の減税が受けられます。
結果としてリーフの自動車税は1年間7,500円となります。
プリウスは排気量1.8リットルですからもともとの自動車税は39,500円。
75%の減税を受け、10,000円で済むことになります。
しかし、この自動車税の減税には二つ気を付ける点があります。
・減税は、翌年に1回のみの適用であること。
取得税は最初に1回で免税、重量税は車検ごとに1回で免税、自動車税は最初の年は減税なし、翌年が減税(75%)、翌々年は減税はありません。
・次世代自動車に対して自動車税が免除になる県があります。
今のところ、東京都と愛知県だけです。
この免除は通常のハイブリッドカーには適用されません。
東京都・愛知県にお住いの方はメリット大ですね。
電気自動車の税について簡単に言うなら、電気自動車やPHEV等の次世代自動車を購入する場合、
1. 自動車取得税は免税。車両価格の2.7%程度くらいお得。
2. 自動車重量税は購入時と1回目の車検時が免税。年間1万5千円くらいお得。
3. 自動車税は東京都と愛知県だけは5年間免税。それ以外は排気量に応じて課税だが、電気自動車の場合は税金の最も安い1リットル以下の税率。
購入の翌年度だけ、減税の制度がある。
と考えればよいと思います。
4.電気自動車のデメリット
上記をみると電気自動車は魅力的に見えますが、下記のようなデメリットもあります。
1. 充電スタンドが少ない
電気自動車の普及に伴い、充電スタンドの数もずいぶん増えてきました。
調べによると、2019年時点で日本にある公共充電スタンドの数はざっくりした数字でお伝えすると、急速充電スポットがこの記事執筆現在で約40,500か所、普通充電スポットが約7,800か所、合計10,000か所(両方設置は1か所に計算)あります。
思った以上にありますよね?
因みに、日本のガソリンスタンド数は1994年度の6万か所をピークに現在はほぼ半減しています。
しかし、電気自動車の人気の高まりとこれからの需要を考えると、この数ではまだまだ足りないと言えるでしょう。
充電スタンドの数を考えると、家庭に充電設備を用意したいところです。
電気自動車の充電を家庭で行う場合、一般的な家庭用コンセントは使えません。
発熱による発火やブレーカーダウンの危険があるからです。
2. 充電に時間が掛かる
充電に時間がかかる点も、電気自動車のデメリットです。
家庭用の充電設備で0からフル充電をすると、およそ8時間はかかります。
急速充電が可能な場合でも、30分から40分はみておかなくてはならない上に、80%しか充電できません。
ガソリンなら満タンまで約5分です。電気自動車のさらなる普及促進のためにも、充電時間の大幅な短縮が望まれます。
3. 価格が高い
電気自動車の購入に躊躇している人の多くが、価格の高さをデメリットとしてあげています。
現在国内メーカーが発売している電気自動車の価格は、平均で300~400万ほど。
ガソリン車なら100万前後から購入できるので、まだまだ電気自動車の価格は高いと言えます。
電気自動車を購入する場合は、減税や補助金を上手に使うようにしましょう。
4. 航続距離が不安
最近では少しずつ欠点が解消されつつあるものの、電気自動車の航続距離の不安はまだ残っています。
「テスラ」のように大型の電気自動車でも、1回あたりの充電で500km前後。
300~400万円クラスで最も航続距離が長い「新型リーフ」でも、理論値でフル充電1回あたりの航続距離は400kmです。
実際はエアコンの使用状況や速度などの影響でかなり変わってくるので、各メーカー発表の航続距離の6割くらいでみておいた方が良いでしょう。
そう考えると、電気自動車による長距離移動は少し不安です。
5.タイでの電気自動車について
2019年3月、バンコク郊外で東南アジア最大の「バンコク国際モーターショー」 が開催されましたが、展示即売会の側面が強い同モーターショーにおいて、EV の受 注台数は、昨年比17倍の6,166台へと急増したとの事です。
これは、昨今の大気汚染の悪化(PM 2.5)から、EV に対する消費者の関心と潜在的な需要が高まってきているのではないかと思われます。
タイにおける電気自動車の現状
タイ政府は、2015年に「EV アクションプラン」を定め、電気自動車の推進に取り組んでいます。
このプランで は、2021年以降のタイの EV 登録台数を120万台、充電 スタンド設置数を690カ所とする政府目標が掲げられ ています。
ところが、現在、タイ国内で登録されている次 世代自動車数は122,504台(ハイブリッド電気自動車 (HEV)、PHV を含む)であり、EV に限定すると201台にとどまっています。
これは、国内の自動車登録台数の1%にも 満たないとの事です。
また、充電スタンドは現在220ヶ所であり、 政府目標を達成する為、今後も官民挙げて設置が進められる予定との事です。
2019年6月には、タイ日産自動車とタイの地方電力公社(国営組織)がMOUを締結し、今後、日産の「リーフ」の家庭用充電設備の設置を支援する予定との事です。
タイのEV市場は、政府のビジョンや投資誘致を目的とした政策が先走りって おり、現時点では、実際に走行するEVはあまりにも少なく、普及のための環境 整備もまだ十分とは言えない状態です。
しかしながら、タイ政府や市場関係者は、EVの生産や普及が先行する中国や欧米でベンチャー企業や異業種の参入が相次いだように、新たな生産の担い手 がタイでも加速的に増えると予想しており、実際、日系ベンチャー企業 の FOMM は、タイで小型EVの量産を開始し、モーターショーや様々な イベントにおける展示や受注も始め、タイ国内でもEVの利用に関して注目を集めているとの事です。
タイ政府による投資促進策とメーカーの動向
タイ政府は、国内のEV産業育成と需要拡大の両面に力を入れ始めてきています。
タイ投 資委員会(BOI)は、メーカー各社にタイ国内での生産を促すため、EV、PHV及びそれらの部品生産に関する税制優遇制度を導入しました。
昨年末の申請受付の締 め切りまでに、およそ 20 社が申請を行ったとの事です。
また、2019年3月、政府はEVの早期の生産開始を促すため、BOIの認可を受け て生産されたEVの物品税を来年1月から3年間、無税とすることを決定しました。
現行のEVの物品税は、BOI認可の場合は2%、認可を取得していない場合は8%となっており、こうした政策に呼応して、2019年5月には、トヨタ自動車がタイ で車載電池の生産を開始する等、メーカー側もEVの生産に布石を打ち始めて います。
6.まとめ
電気自動車にはメリットとデメリットどちらもありますが、今後の普及率向上を考えると購入を検討する余地は十分にあると言えます。
電気自動車の普及に積極的な海外や、最近進みだした日本と比べれば、タイはまだまだ遅れを取っています。
タイでの自動車の利用は長距離運転がメインなので、現時点での電気自動車の運用は厳しいと思えます。
しかし、現在のタイで重要視されている環境問題に伴う今後の政府による政策と充電スタンドの普及率と設置次第では、タイでの電気自動車の利用率や販売台数は大きく化ける可能性があります。
そんなタイでも日本の様に、メーカーへの投資とは別に、消費者への減税や補助金は出てほしいところで、最近ではPM2.5の影響で首都バンコクは常にスモッグが掛かっていますし、これを機にタイ政府も電気自動車を推奨する様にしてほしいのですが、現状を見る限りタイでの電気自動車の発展はまだまだ遠い気がしますね。