Vol 16. MWCのおもひでぽろり

Vol 16. MWCのおもひでぽろり

通信キャリアが無い国は無い。どの国でも通信キャリアは時価総額トップクラスが営んでいる。元国営企業がトップキャリアのケースも多く、国の威信をかけて、栄枯盛衰が色濃く反映される場がMWCでもあるので、各国、気合いの入れようが違う。

というのは、少し過去のブームだったのかも知れない。このプレゼン・実演するなら、この程度で良いだろうと適正サイズのブースを構える日系企業、とにかく大きなブースで会場の1エリアの半分くらいを占有して目立つ中国企業。
見栄より実利主義、成熟路線に向かっているという見方もあるが、やっぱり自国企業がドーンとブースを構えていると嬉しくなるものだ。日本企業は随分元気が無くなったな、、、という印象だ。

MWCの過去記事はこちら

みんなでジリ貧の日本

日本は、MVNOの解放を後押ししたあたりは私も好感していたが、キャリアに値下げ圧力を掛けたのは今考えてもやっぱり悪手だったと思っている。MVNOとMNOでは、カネの掛けどころが全く違う。MNO(キャリア)は新しい技術の方向性を示し、特許技術を要素レベルで獲得することは試行錯誤の積み重ねで、ロビイングも含め、カネがかかる。その点、最近、中国は国を挙げてバックアップしており、5Gの主要技術の特許件数は3分の1くらい中国が持っていってしまった。急に5Gの規格化らへんから中華系の影響力が大きくなった印象で、業を煮やしてHuaweiを締め出したトランプの方が、よっぽど理に適った行動だったと思っている。(当時、騒がれていたHuaweiの基地局・スマホで中国政府がデータを吸い上げるから悪だ、というロジックには違和感しかないが。)

政府の市場介入により、結果的にデフレを扇動し、企業のR&D予算が削られ、国際標準化でリーダーシップを取れず(それどころか出遅れてしまい)、国全体がジリ貧になるループは通信事業に限った話では無い。そもそも、MVNOで低所得者層の受け口は市場として十分出来上がってきていたから救済はされていたはずだ。それまで市場形成してきたMVNOや携帯ショップ運営事業者たちの首を絞める行為は、あまりにも悲惨だ。

 

がんばれニッポン!エピソード①

それでも、日の丸キャリアは頑張っている。
2018年、楽天がMNO参入したが、実は、そのプレスリリースはMWC期間中にバルセロナで行われた。楽天は、当時メインスポンサーだったFCバルセロナのスタジアムのクラブルームに要人を集め、シークレットイベントを開催した。光栄にも、私もご招待頂き、参加させて頂いた。

FCバルセロナの選手も応援に来る、という噂が出回っていたのでメッシが来るかも!!!と、興奮したものだが、結局は、ピケしか参加しなかった。
、、、なんて表現は失礼なくらい、海外サッカー好きからしたら、ピケは超ビッグネームだ。その場で間近に見られたのは、あり得ないくらい光栄なことだ。すげーな、自分もこういうことやりてー、って思った時点で、少なくともビジネスの後輩に夢と影響を与えている三木谷さんはやっぱり立派な方だ。ああいうところでイベントをやったり、各国の主要を集めるあたり、グローバル企業になるんだ、という強い覚悟と気概を感じる。男っとこ前だ。(自分もだいぶミーハーで単純な思考回路だが・・・)

ピケ!!

 

がんばれニッポン!エピソード②

対して、ある別の日系キャリアのブースに立ち寄ったときに、ある意味、ニッポンの大企業の縮図だな、、、と思ってしまった。その年は結構攻めた感じで期待値が高かった。ブースのクリエイティブも日本人から見たら安直すぎる和の表現は気になったが、逆に欧米人ウケは良かったようだ。狙い通りか分からないが、良い意味で目立っていた。

そのブースで、5G遠隔操作の実演をやっていた。壁隔てた向こう側に師範の恰好をした、いかにも書道家の人が腕に器具を装着して壁の大きな半紙に一筆書き始めた。そして、壁を隔てた向こう側の和紙に遠隔操作だけでロボットが同じ文字を書く、という実演だった。

「どうせ同じ文字が書けるんでしょ。」と思いながら見ていたら、見事に失敗した。
遠隔操作で動くロボットが持つ筆が、ガガガガガってなってしまって、無残にも半紙がビリビリに破れた。ブース内では、目線を下げて暗くなっている人半分、青ざめてアタフタしてる人半分、と言う感じで、無言の空白の数分を経て、日本人の分かり辛い英語で、「今回は失敗に終わりましたが次回はXX時です」というアナウンスで終わった。

そして、2回目は上手くいっていたが、失敗したときの方が人だかりは多かった。

自分だったらどうしただろう?

実に勿体ないな、と思って眺めていた。失敗して初めて、ヤラセではないリアリティを感じ、オーディエンス全員が頭を働かせたと思う。そういえば半紙という薄くてすぐ破れる紙にロボットが習字を書くというのは、AIで実装が難しいと言われている指先の動きや、繊細なタッチを表現する高度な技術の結集のはずだ、そして、それを5Gの遠隔操作技術で実装するのはかなり高い技術力が必要だ、と。

私は最初の失敗も、フリだと思っていたくらいで、逆に、「おっ」と期待してしまい、素通りしようと思ったが足を止めた。他にもそういう人も多かったように見えた。あまりの失敗の無残さに、応援するような声も聞こえた。

私が中の人だったら、これはチャンスだ!と思って出張ってMC蹴飛ばしてでも、前に出ていたと思う。(だからサラリーマンが勤まらないのだろうが、、、)

どれだけ難しい技術の結集なのかをプレゼンする絶好のチャンスだし、メンバー・技術紹介も説明する流れが作りやすい。そして、次の予告をして、改善のチューニングする過程や、失敗の原因や数値を公にする。予定調和より、その過程を見せる方がよっぽど価値がある。むしろ、毎回成功するより、10回に1回しか成功しないとしたら、それを先にオーディエンスに伝えた上で、その貴重な成功の目撃者になれるレア感を演出していただろう。

実に、勿体ない。が、ナイストライだったと思う。いつもつまらないプレゼンの印象だったので、そのくらいの攻めた感じがとても好感出来た。ハラハラも含めて、良い意味で日系企業らしくないチャレンジだったと思う。少なくとも、あの後、上司が技術者を叱ることや、恥かいたからと萎縮して次回は安パイで、、、と言う発想だけには陥らないで欲しいものだ。

 

最後に

結局、今年はヨーロッパ行きを諦めたのだが、来年こそは必ず行きたい。
と思う反面、最近の自粛生活が続く中で子供たちと居る時間を長く取れていることも、それはそれで良いな、と感じる今日この頃。これもまた貴重な時期かも、と思っている方も多いのではないでしょうか?

、、、と思う決め手になったのが、長期出張から帰ってきた後に、このタイのショッピングモールによくある「てんや」のおじさんマスコットに、下の子が「パパァ~~~~~~」と向かって、抱き付くようになった時だ。どうやら、長く家を空けている間にパパに会いたいと言われて、妻がここに連れてきたところから始まったらしい。

おい、全然似てねーぞ!まだそこまで禿げてないし。
癖がまだ抜けないらしく、毎回、これを見付けるたびに、「パパ―」、「パパ、またいたーー」と言って、タ――――って走っていくのだが、その度に出張はなるべく減らそう、もっと息子たちとの時間を大切にしよう、と心に決めるのであった。

 

関連する記事

Go to top