今回は、「スマートフォンの今までとこれから」についてです。
AppleのiPhoneやGoogleのAndroid OSが搭載された端末をはじめ、私達は常にスマホを持ち運び、もはや体の一部、生活必需品というレベルで切っても切れない存在となっています。
現在は主にタッチ操作の機種がほとんどですが、ベゼルがないノッチデザインや、レンズが3つもついた高性能カメラを搭載したモデル、高齢者が操作しやすい、らくらくスマートフォン等、多種多様なデザインや機能を有した端末が販売されています。
自分の趣味や生活、仕事のスタイル等に合わせて使いやすさや便利さを求め、選ぶことができるのが今のスマートフォンの魅力です。
今では当たり前となっている形状や操作方法のスマートフォンですが、現在の形に落ち着いたのは約10年前になります。
それまでには多くの試行錯誤を繰り返し、今の形へと目まぐるしく変更していきました。
今回はスマートフォンの歴史とこれからについてを紹介します。
1.初期の携帯
通話機能のみに特化した携帯電話は「ベーシックフォン」、カメラや通信機能を搭載しつつも通話機能が主体となっている携帯電話は「フィーチャーフォン」と呼ばれています。
1990年代は、まだスマートフォンは一般的ではなく、携帯電話といえばストレート形状やフリップ式のもので、通話やメッセージ機能が中心です。
一方、海外では米Appleコンピューターが1992年に「Apple・ニュートン」を発表しました。
これはスタイラスを利用した手書き認識機能や通信機能を備えた画期的なモバイルデバイスでして、当時、このような端末はPDA(Personal Digital Assistant)と呼ばれていました。
Apple・ニュートンは商業的な成功を収める事はできなかったのですが、米Palmが1997年に発売した「PalmPilot」はビジネスユーザーだけでなく、個人向けにも世界的にヒットしました。個人用の情報端末という存在が、一般に知られることになった瞬間です。
2000年代に入ると、市場に存在していたスマートフォンは、フィンランドをベースとするNokiaの「Symbianスマートフォン」、RIM(加リサーチ・イン・モーション)の「Black berry」、それに米マイクロソフトの「Windows Mobile」端末等が流行しました。
スマートフォンとは、オペレーション・システムを搭載し、Webブラウジングやソフトウェアアプリケーションを実行する機能といった、電話と関連しない機能や統合コンピュータを有した携帯型電話機の総称として使われています。
この時代のスマートフォンの特徴として、多くの端末が画面下やスライド機構にハードウェア・キーボードを搭載していたのが特徴的です。映画、「マトリックス」内でもスライド式で開閉するNokiaの8110(通称バナナフォン)が利用され、この時代はNokiaの全盛期となりました。
この時代は画面を操作して端末を動かす仕組み(タッチパネル)で文字を入力するというアイディアは採用されておらず、携帯にある12個の物理ボタンで数字も文字も打てる様な仕様になっていました。
2.iPhoneが与えた影響
2007年、Appleから「初代iPhone」が投入されたことで世界は一変しました。
初代iPhoneは今までの物理ボタンを無くし、スマートフォンの画面をタッチして動かす、いわゆるタッチパネル方式を初期段階から採用していました。
当時AppleでCEOを務めていたスティーブ・ジョブズによる初代iPhoneのプレゼンは今でも伝説的に語り継がれている程です。
後に多くのプレゼンターがジョブズのスタイルを真似し、どこもかしこもジョブズと同様なプレゼンのスタイルが主流となってしまいました。
それはさておき、当時のジョブズは、Motorolaと共同開発した音楽プレイヤー内蔵の携帯電話に不満を感じていた。そこで、開発中であった後の「iPad」となるタブレットコンピューターの技術を元にした携帯電話を自社で開発することとなりました。
そこから、世界のスマートフォン市場を一変させた「タッチディスプレイ」搭載のスマートフォン「iPhone」が誕生しました。
初代iPhoneは初めてのスマートフォンではないですが、さまざまな意味で画期的な存在であり、タッチ操作以外にも、ハードウェア・キーボードやスタイラスを搭載しない全画面デザイン等、これまでに存在しなかったアプローチが図られていました。
この軸となっているデザインは、現代の全てのスマートフォンでも全く変わらず引き継がれており、さらに通信機能によりオンラインストアからアプリを追加して拡張できるという機能も万人に支持され、現在でもアプリ無くしてのスマホという不思議で密接な共存関係が生まれました。
これによりユーザーの利便性が大幅に改善されただけでなく、アプリ市場という新たなゴールドラッシュにも似たマーケットの開拓が盛んになり、従来の携帯とは違い大画面でインターネットやメールサービスに直接アクセスできるiPhoneの様なスマートフォンが登場し、フィーチャーフォンの衰退が始まりました。
衰退の理由は、スマホの場合は大画面で手元で手軽に好きなゲームやアプリの取得ができ、自由に自分の利用方法に合わせてカスタマイズができるという仕組みが万人に受け入れられたためです。現在でもこの基準は変わらず引き継がれています。
3.第二、第三勢力登場!
iPhoneに遅れること1年後、米Google社のモバイル向けOS「Android OS」を搭載したスマートフォンが登場しました。
もともとAndroid OSは、Google社ではなく米Android社が開発したものでした。
同社の設立メンバーには、Androidの父とも呼ばれるアンディ・ルービン氏もおり、Android社を2005年に買収したGoogleは、スマートフォン向けOSの開発をスタート。
そして2007年11月に、Googleは米クアルコムや独T-Mobileと共にAndroid OSを発表。
2008年10月には、T-Mobileのアメリカ部門から初となる携帯端末「T-Mobile G1」が発売されました。
Android OSの特徴は、端末製造メーカーが独自にOSをカスタマイズする事ができ、自社製スマートフォンとして販売できる点です。
iPhoneはAppleしか開発できませんが、Androidスマートフォンは世界中のメーカーが開発・販売できるようにOSのオープンプラットフォームと言う仕組みを作りました。
その結果、現在はどちらのOSもお互いの長所を習い、欠点を補う方向で進化しており、できる事に大差はなく、一長一短の鬩ぎあいとなっています。
一方マイクロソフトは、小型PC用のプラットフォーム「Windows CE」を発展させる形で、モバイル向けOS「Windows Mobile」を2000年にリリースしました。
Windows Mobileは2010年に「Windows Phone」へと進化し、対応端末がNokia等から満を持して発売されました。
Windows MobileとWindows PhoneはiPhoneやAndroidに対抗する第3勢力として、PCとのリンク性との期待が高まり、今後大きく成長する事を期待されたが、残念ながらそのシェアは常に低空飛行を続け、逆にニッチな商品となってしまったのでした。
その理由はOSの完成度の低さもさることながら、シェアの低さからサード開発者やiPhoneやAndroidと同じ様なアプリの制作企業を呼び込むことができず、その為にプラットフォームの使い勝手も悪くなるという、負のサイクルが続いてしまった事がみられます。
2015年にはPC向けOS「Windows 10」とタイミングを同じくして、「Windows 10 Mobile」が登場しました。
こちらも採用メーカーは国内外から数多く登場したものの、シェアの奪還という意味では目的が果たせず、2019年10月にOS自体のサポートの終了が予定されています。
PC向けOSで圧倒的なシェアを誇るマイクロソフトにとって、モバイル向けOS市場への参入と撤退は手痛い状態となりました。
4.Androidの勢い
iPhoneとAndroidによるスマートフォンの開発競争は苛烈を極め、時にはAppleとAndroidメーカーの間で特許紛争が起きることも多々あります。
しかし、両者に近道、遠回りはあったものの、結果としてどちらもほぼ同レベルの機能やサービスを提供しており、行き着く先、ゴールは同じ方向を向いているのです。
そのバランスが崩れたのは、2018年に入ってからでした。
iPhoneが端末の進化を止める一方で、Android OSを利用している中国スマホメーカーは、「トリプルカメラ」や「ディスプレイ指紋認証」、「ベゼルレス」や「ピンホールノッチ」「dual SIM」等、万人の好奇心をそそる画期的な機能を投入しました。
写真撮影の品質や端末のデザイン性、使い勝手や性能等のスペックだけでなくユーザビリティでもiPhoneを上回っている状態です。
さらに、Samsungも中国メーカーに迫る勢いでスマートフォン開発スピードを上げており、現在のスマートフォン市場は韓国勢と中国勢によるAndroidスマートフォン同士のシェア争いの様相を呈しています。
Androidは色々なスマホメーカーから発売されており、特許という枠はありますが、技術も発想も色々と多様できる状態であり、最近では折りたためるディスプレイやマルチディスプレイ等と言った畳むとコンパクトだが広げると大きくもなるという発想が広まってきています。
現にSamsungから出ましたGalaxy Foldは折り曲げることができる有機ディスプレイを採用しており、広げると7.3インチの大きさになります。
OSも複数のアプリを同時に利用することができ、まさに小さいながらも使い勝手はPCに迫ってきており、Androidの進化の勢いは未だに続いています。
5.まとめ
スマートフォンはこれまでに何度も「進化が止まった」と言われてきましたが、メーカーによる未来を見据えて想像を具現化していくという技術開発により、アプリや機能を含め、PCの性能を追い抜く勢いで今後もさらに進化しようとしています。
スマートフォンから派生したタブレット等もその一種と言えます。
まずは今年度に登場する予定の、折り曲げることができるディスプレイを搭載した折りたたみスマートフォンや、dualディスプレイのスマートフォン等と言った技術が、スマホの新たな進化、若しくは今後の新たなステータスになり得るのかという事が楽しみです。