Vol 21. 帰任する社長100人に聞きました。タイで一番必要なのは、〇〇力

Vol 21. 帰任する社長100人に聞きました。タイで一番必要なのは、〇〇力

今年も帰任シーズンがやってきた。
毎年、この季節は送別会のオンパレードだ。今年も沢山の方々が帰任していった。
任期があるのは駐在員の宿命だけど、見送る身としては寂しい限りだ。

常夏のタイでは、桜や紅葉が視覚を刺激してくることも無ければ、衣替えで炬燵を出す行事も無いので、時間の経過に鈍感になりがちだ。タイ生活が長くなってくると、駐在員のWelcomeからFarewellまでのサイクル全部を見届ける機会も増えてくる。そして、送別会で、「あれからもう3年も経ったんだ、、、」と、そこで時の流れを実感するようになる。小さな玉手箱を空けた感覚で、急に外界の流れの速さを突き付けられた感じが、少し怖い。

先に謝ります

100人にちゃんと統計を取った訳でもなければ、「正の字」付けて集計している訳では無いです。よくある釣りタイトル的なのを一度やってみたかったのでお許しを。

タイでトップを張っている駐在員は、日本で部課長クラスの方もいれば、役員クラスの方、他国から横滑りの方もいる。工場長などの現場トップから、と言うケースもあれば、総務・人事出身のケースもある。いろいろなバックグラウンドの方々が、海外では分け隔てなく交われる点が、海外で仕事する醍醐味のひとつだろう。

専門が異なる人同士の交流は面白い。そして、個性的・魅力的な人ほど、「日本に帰りたくない。」「タイでもう少し勝負したかった。」と言う傾向にある。タイで開花した個性が、日本では殺されてしまう懸念もあるのかもしれない。中には、大企業を辞めてタイで独立、転職、という強者も、今や珍しい話では無くなってきた。

送別会などで帰国する方たちに私は必ず同じ質問をする。
「タイで仕事して、 “なにりょく” が一番パワーアップしましたか?」
〇〇力、と答えてから理由の説明が必要な質問でもあるので、自分が足りなかった資質的な反省や、実体験からの教訓や蘊蓄も聞ける。理想と現実の狭間でリアリティある苦悩も垣間見れる。

 

3位はマネジメント力、2位はコミュニケーション力、そして1位は、、、

3位・・・マネジメント力

この回答は、特に現場出身の方がトップについたケースや、比較的若い方が多い。未経験分野、特に採用・教育・社員のモチベートなどの人事周りに苦心した、という方が多い。他には計数管理などの管理力が身に付いた、本社へのレポーティング力・調整力(これをマネジメントに含めて良いのかは疑問だが、、、)という内訳だ。

私は、マネジメント力はもっと多くの回答があると想像していたのだが、意外と課題を感じている方は少ない印象だ。海外トップを任されるような方は、元々、日本や他国でアタマを張っていた方が多いから、既にマネジメント力が備わっている方が赴任してくるケースが多いからかも知れない。そもそも、マネジメント力なんてものは、特別なものでは無いのかも知れない。

 

2位・・・コミュニケーション力(折衝力・交渉力含む)

顧客だけでなく、スタッフ、取引先、ステークホルダー、本社など、コミュニケーション機会の絶対数が多くなったことも一因のようだ。ゴルフも欠かせないコミュニケーションツールになっていて、とにかくゴルフ好きが多い。ゴルフをタイに来てから好きになった、好きではないけど営業的に求められるから仕方なく、という方も含めて、駐在員の伝統的な系譜のようだ。

タイ語力、英語力という単純な言語スキルの向上もここに含まれるが、駐在員の皆様の言語能力の高さ(特にタイ語)は、本当に驚かされる。タイ語は、タイに来てから始めた方が大半にも関わらず、帰任時には流暢なタイ語を操っている方が多い。タイ人スタッフは、片言でも一生懸命タイ語でコミュニケーションを取ろうとする上司には信頼を置くものだ。相手の言っていることを少しでも理解しようと、タイ語でコミュニケーションを図り、スタッフとの距離感を縮めようとする努力・姿勢には感銘を受ける。

対して、どうせ任期も3~5年だし、会社には通訳も居るし、マイナー言語だから習得しても今後使うことも無いし、、、と割り切って、タイ語習得を諦める、または英語力のUPに走るパターンも意外と多い。私はこれはこれで合理的と思うので全く否定しない。というのも、実は、私もそっち側で(私の場合はただの怠慢だが、、、)、9年近く経った今もタイ語がからきし話せない。だから余計にタイ語が話せる先輩方に尊敬の念があるのだが、「タイに来たらタイ語で話すのが当然だろ」とお叱りを受けることも多い。
ごもっともです、、、精進いたします。

 

1位・・・忍耐力

堂々の1位は、忍耐力だ。異口同音レベルの圧倒的1位かも知れない。
日本では部下に怒鳴り散らしていたが、タイでは辞めた。タイの事情も分からず本社から不毛な要求を求められるが、いなし方に慣れた。仕事が出来ない部下でも我慢強く待てるようになった。時間が守られなくても怒らない自分でいれるようになった。日常生活の接客レベルにフラストレーションを感じても怒らなくなった。

日本からの要求レベルとマイペンライ的商慣習の狭間で苦悩が多いようにお見受けする。タイも10年前と比べたら、かなり質も上がり、タイ人自体の忍耐力も上がっているように思えるが、やはり駐在員という日の丸企業を背負っている方が、高い業務水準をDNAレベルに刻み込まれて来たら、最初は戸惑いが多いとは思う。

社員に厳しくしてしまうと、すぐにへそを曲げてしまったり、逃げのスタンスを取られる。社員に辞められるのは困るので、一旦怒りを収めてガマンガマン、どうやったら分かるように伝えられるか、、、と自分が変わらなければ、というマインドが芽生えてくるようになるらしい。修行の境地に近いのかも知れない。

最近、お見送りした方も「忍耐力」を挙げていたが、日本にいる頃は部下に恐れられていた鬼上司だったそうだ。それが、タイに来て修行してから、許容範囲が広がって考え方も変わった、と仰っていた。日本の部下からも、タイに行ってから優しくなった、と言われて、以前より慕われている感覚をお持ちだった(こんな会話を部下とざっくばらんに出来る時点で、既に慕われていたとは思うが、、、)。相手の立場に立って、どうやったら分かってくれるかを一旦冷静になって考え指示する、という行間が読み合える日本人同士では端折っていた部分が、言葉だけでなく心情的に大切なコミュニケーションの方法だと気付いたようだ。多忙な日々の中でも、強権的に速度重視で「余白は自分で考えろ」的な指示を出すことよりも、一旦、相手目線でコミュニケーションを取ることが長い目で見たら良いと思っている、という言葉は示唆に富んでいる。

 

所感

実は、「忍耐力」以外はかなりバラけていて、マネジメント力もコミュニケーション力も少数意見を強引にカテゴライズしてこの順位になった感じだ。他にも面白い解答が多いので、いつかまた番外編をこの場でアップデートしたい。(酒の席では、いつものノリで大喜利的な流れに発展するケースも多く、しかしどれもツマランので文字に起こすのは控えます。)

最近、「人間力」と答えた方がいた。
日本ではそこそこ知名度がある会社でも、タイに来たら横一線。会社の看板よりも、自分が何者かの勝負になる。また、タイ人スタッフも外国人上司に対しては言語や文化の障壁を超える人間力が問われている、と。全てが集約されている気がして、確かにな、と思う。

やはり日本は恵まれている。特にマネジメント層には温い環境と思う。
日本人は多くを言わなくても最低限の仕事をしてくれる、行間を理解してくれる、放置しても悪いことはしない、空いた時間で何かの仕事は見付けようとする。ある意味、日本人のマネジメントは楽な仕事かもしれない。

ここはタイだ。日本のやり方を押し付けるのは、おこがましい。
仕事の精度や、物事の捉え方、水準、すべてが異なる。日本人が当たり前、と思っていた常識は、本当にそこまでする必要あるのか?と疑うことから思考を張り巡らせ融合していくことが一歩目と思う。カルチャーギャップと言う点で、実は、タイは世界で一番、日本と近い行間で仕事ができる人種だと私は感じている。一生懸命伝えれば伝わるし、情に深いし、必ずしも合理性だけでは無い部分が、私はとてもやりやすい。

忍耐力というのは後ろ向きな言葉に聞こえるが、包容力とも人間力とも換言できる。
タイの駐在生活を終えた皆様は総じて、タイ生活を満喫して、苦悩を乗り越え、パワーアップして帰任されている気がしている。

 

最後に

4月は新規赴任シーズンでもある。今年は、ベリーモバイルショップからの速報を見る限り、コロナ控えからのリバウンドで赴任者が多い印象。

新規赴任の皆様がタイ生活を満喫して、タイに来て良かった、と言えるような充実の期間であってほしい、と心より願っております。
新生活が始まる皆様の門出に幸多かれ!!

ベリーモバイルでは、新規赴任者向けにWelcomeキャンペーンや、日本から契約が出来てSIMの発送も行っております。
こちらも是非、ご活用ください!



 

関連する記事

Go to top