IT革命の次には、AI革命が起きる。
2045年には、AIが人間の脳みそを上回るシンギュラリティ時代の到来だ!
、、、というモメンタムは最近少々トーンダウンした気もするが、「AIが職を奪う」という悲観論や、「言うてもそんな変わらんしょ」と言う楽観論まで、人それぞれ捉え方は違うと思う。
間違いなく、AIの時代は訪れる。というか、もうだいぶ来ている。IT革命と同等の社会的インパクトが起こるのも間違いない。今後、どんなパラダイムシフトが起きるのか、自分の周りの世界はどう変わるのか、想像できていない人の方が大半だろう。
かく言う自分もボンヤリとしか見えてないが、ひとつだけ言えるのは、経営者目線で言えばAI時代の到来は大歓迎。ITやスマホの環境に恵まれている時代に経営者としてスタートできたのは幸運だし、更にこれからAIの加速度的な普及により便益をもたらしてくれると確信している。これは、ほとんどの経営者(特に、中小企業やスタートアップ)共通の捉え方じゃないかな?
右も左もNTT
僕は、NTT一家に生まれた。
父方の祖父は東北局長だった。祖父の兄弟も全員NTT職員。(当時は、逓信省とか、電信電話局という時代)。僕の両親もNTT内で職場結婚したらしい。見事に親戚ほぼみんなNTTだ。祖父の葬式では、参列者は所属の部署を名乗り、共通の上司の話題をする、という同窓会のような気持ち悪い光景だったことを今でも思い出す。
そんなNTT一家に育ったのだが、母の職務内容を一度だけ聞いた事があった。
どうやら、「交換手」という業務を行っていたらしい。
交換手というのは、当時、長距離通話は仲介人が必要で、「XXへの通話ですね、少々お待ちください。」と言って手動で繋ぐ、というオペレーションを人海戦術で回していたようだ。なかなか倍率の高い仕事で、就くのが難しく、国家資格が必要だったらしい。その当時でも、自動交換機が開発・導入され、交換手の従事者も少しずつ減ってきた頃だったようなことを言っていた。
そんな(恐らく)花形だった交換手、と言う職業も今は全て交換機に替わり、従事者は完全にゼロになった。それどころか、音声通信もIP化され、固定電話のアナログ回線自体が廃止の方向になっている。NTT一家は、固定回線が無くなる時代が来ることを想像すらしていなかった。
(実は、僕は予想していた、というポジショントークはここでは控えておきます。)
IT化からAI化
まさに電話交換手が不要になったのと似ている現象が、これから到来するAI化の流れと思っている。
「交換手なんて仕事あったんだ〜、信じられない〜〜」
と思っていたが、今まさにルーチンワークに浪費している僕ら世代が、息子世代にこんな言葉で嘲笑されるのだろう。
NTTの社長の立場になってみたら、300人くらいいた(母の記憶なので真偽はさておき)交換手が、交換機に替えるだけで大分コストは削減できただろうし、機械なら24時間働いてくれる。間違いも起きにくい。不正も起きない。そりゃ、最初は莫大な費用が掛かろうが設備投資する、というのは自明な経営判断だ。
今、巷でよくあるBtoBの業務系SaaSの謳い文句は、大概こんな感じだ。
「今3人のスタッフでやっている業務をこのシステムを導入することで1人で出来るようになりますよ。しかも人件費の半人分で!」
なかなか巧い営業トークだ。本当にパフォーマンスが上がるなら、合理的に考えて投資すべきだ。しかも、大体のSaaSサービスは初期費用無料(またはオンプレでスクラッチ開発することを考えれば破格な初期投資)で使い始めることが出来て、いつでも辞められるとなれば、NTTが交換機に設備投資するより遥かに簡単な意思決定だ。
そうやって、事務作業がどんどんと便利サービスに代替されていく。
この便利サービスのアルゴリズムには、勿論AIが導入されている訳で、見えないところで既にAIに職は奪われていっているのだ。
AIとの付き合い方
なぜ、経営者目線でAI時代が歓迎か、というと可能性が拡がるから、に尽きる。ちょっと前までだと到底実現できなそうなことや、労働集約的に大量の人員を抱えないと出来なそうなことでも、何となく実現出来てしまいそうな気がするからだ。
AIの得意分野をうまく活用することにより、
・予測やシミュレーションの時間が短縮できる
・単純作業を自動化・機械化できる
・非中核業務を外部化できる
・開発工数を圧縮できる
・OODAループを高速化できる
この辺の効果は大いに期待できる。
例えば、最近始めたCloudRoom事業だって、この時代じゃなければスタートしていなかった。これまで避けていたような、一見、大企業が得意そうな労働集約的であり、ハコモノという資本集約的でもあるビジネスモデルは、業界が硬直的であるほど逆にチャンスは大きいと今は感じている。
CloudRoom : www.cloudroom.me
CloudRoomが目指したい方向性としては、全員がクラウド上に収納スペースを持てる世の中だ。まだまだ発展途上だけど、こんな未来を描いている。
■ スマホかざすだけで見積りがカンタン
(現状)スマホアプリでお客さんが採寸または当社スタッフが採寸の上、見積もりが完結
↓
(未来)スマホのLiDAR(ライダー)光学センサーにより自動採寸。また、ECサイトから莫大な画像データと採寸データをスクレ—ピングして画像認識により補正して、より精度が高まる。
■ Drag & Dropでクラウド上に保管
(現状)当社スタッフが指定の場所へ訪問の上、集荷
↓
(将来)街中を走る自動運転による循環ロボが集荷が手配されるので、そのロボに渡すだけ
■ 海外出張があるから、スーツケースを取り出したい
(現状)アプリで依頼を受けて、受け取り希望日、場所を入力。当日は弊社スタッフから受取り
↓
(将来)より粒度の細かい個体管理が進み、倉庫内配置アルゴリズムも個別最適化される。
スーツケースの中身の選定からパッキングまでお任せできて、カレンダーに出張スケジュールを入れた時点で一気通貫、通関手続きさえも済まされて、海外出張先のホテルで受取り。完全に手ぶらで出張、なんて世界が実現できるかも知れない。
どれも、これも、そんなに遠くない未来で実現できそうなことだらけだ(AI使わなくても出来ることも多い)。これまでであれば、光学センサー技術開発に何人ものエンジニアが必要だっただろうし、物流部分も多くの人員を抱えるべきだっただろう。この辺は既にライブラリまたはAPIでベンダーサービスと連携できるので、最小人数の投資で済んでいる。
自動運転は完全無人のレベル5実用化に議論は尽きないが、まずは、人を乗せるより先に荷物を、となるだろう。公道を自動運転で走るか、ドローンか、ロープウェイか、何がデファクトになるかはさておき、いずれにせよ、モノの地点間移動は外部化されるだろう。
AI時代は明るい未来なの?
哲学的なコンセンサスはまだまだこれからと思うが、僕は明るい未来と思っている。
AIで享受できる恩恵は、人のケーパビリティを何十倍にも出来る点だ。
自動車が出来てから、人は1時間で移動できる距離が何十倍にもなった。それと全く同じだ。今は、歩くスピードの差くらい、人のケーパビリティに大差が無かったが、それが何十倍にもスケール出来るのがAIだ。
今の人間の頭脳や業務量、生産性の限界が10として、仕事が出来る人が8、普通の人が5としたら、3程度の差分だった。これが、10倍になれば80と50になる。この30の差分が人の限界値3人分相当なのでその分人材が溢れる、というのが雇用が奪われるメカニズムだ。
でも、世の中で必要とされているサービスや財を生むことに、そこまでのケーパビリティが求められ続けるかと言うと、もう経済効率だけで語る時代では無くなるとも思っている。車の運転手、のようにAIも民主化されていくものなので、仕事が奪われるーーー、と恐怖に狩られる必要は全く無い。誰でも生産性が10倍になるので、半分の稼働で5倍の成果が出る、と考えた方が健全だ。だから、大半の人は時間的にも、精神衛生的にももっと余裕のある生活になると見ている。
その対局にあるのが自分みたいな人間で、やりたいことが増えることによって、満たしたい好奇心が膨らみ、今より忙しくなるパターン。これからは仲間3人集めるだけでも、世の中にインパクトを与えられることが出来る時代になる。経営者のような立場や、何かオモロイことをやりたいという、こっち側のタイプの人間たちは、その未来にワクワクして、大歓迎している気がする。
どちらが幸せかはれぞれだが、いずれのパターンも今より豊かな生活になるはずで、AIがもたらす未来は、皆にとって明るいはずだ。ちょっと悲観論が先行してる気がするので、もっと明るい未来を妄想して、来るAI時代を皆で歓迎しまひょ。