Vol 29. カブトムシとプラモデル

Vol 29. カブトムシとプラモデル

男の子は、カブトムシとプラモデルにハマる時期があった。

僕の場合、どちらも全くハマらなかった。
特に虫が嫌いで、飽き性だから、
むしろ嫌いな部類に入る。

友達が虫かごの中で大きなカブトムシ同士を
戦わせて、強さを競っていた。
全く分からん。

友達が大きなプラモデルを長い時間かけて
作り上げ、自宅に招かれ、完成品を披露した。
全く分からん。

 

流行りに乗れない劣等感

どちらかと言うと好奇心は旺盛な方で、
冷めた子供では無かったと思うが、
嫌いな部類のものまでリアクション取るほど、
出来た子供でもなかった。

それが、あまりに熱心に語る友人たちを見るにつれ、
徐々に洗脳されていった。

「カブトムシ、カッコ良いかも知れない。」
「プラモデル、オレも作ってみてぇ。」

次第にこんなことを言い出すようになり、
夏休みに父親とカブトムシを採りに行ったり、
プラモデルを一緒に作った思い出は、
ご多聞に漏れず、欠片程度には残っている。

けど、未だに、どちらも好きでは無い。

現に、父親とのその思い出もワンシーズンしか思い出せない。
きっと、一回は乗っかってみたものの、ハマらなかったのだろう。
少年時分では、この周りの小さな世界こそ全てだと勘違いしてしまう。

虫が触れない軟弱者で、手先が不器用で細かい作業が苦手な僕は
劣等感を抱き、トレンドリーダーたちを羨望の眼差しで眺めていた。

 

次のトレンド

カブトムシ、プラモデル、と来たら、その次はミニ四駆やら、ジャンプの漫画やら、ファミコンやら、野球やら、、、ゲームチェンジは続いていき、中には少し上手な物が出てきた。

ついに、野球やサッカーの時代が到来したらへんから、やっと陽の目を見る時が来た。脚は速かったし、球技は得意だった。自分が上手な分野がメインストリームになったのだ。その頃から、女子にもモテ始めた。毎年、バレンタインが楽しみになった。
小4デビューだ。

しかし、その頃も、相変わらずカブトムシ界に君臨するリーダー格のヨシ君への劣等感は変わらなかった。

やがて、カブトムシ派、野球派のような派閥となり、コミュニティが醸成される。
最初に感じる仲間と思える集合体は、この切磋琢磨と共通言語から繋がり合っていく。そして、プラモデル派がミニ四駆派へ、のような互換変遷を繰り返し、それぞれの派閥がお互いを尊重し、有機的に繋がりを形成していくようになっていくようになる。

 

小4でも大人でも本質は変わらない

翻って、大人になった世界を見渡してみよう。例えば、IT業や金融業など、30年前は見向きもされていなかった。もっと言うと、IT業界など存在すらなかった。
前職の先輩方は元証券マンが多かったのだが、新卒時代の頃は、金融業は怪しい人間が人を騙す仕事だ、と後ろ指を刺されていた、と漏らしていた。

それが今、世間の評価は高く、「勝ち組」と称されている。メインストリームが変われば、同じ仕事や立場でも、モテ方は変わる。

今でこそ、自分も少しは尊敬してくれる後輩も出てきたが、新卒で働かずにカナダに行ったのも、30そこそこで会社をやったことも、良いチャレンジだ、などとは誰からも言われなかった。起業自体が怪しいヤツがするものだ、絶対成功は無理だ、という風潮があった。
それが、ここ5年くらいで一気に風向きが変わった感じがする。

では、カブトムシ業界を現代のビジネスに置き換えると何だろう?
枯れた技術や、斜陽産業を指すのかな?

やはり、高学年になってもカブトムシ話ばかりしていれば、イタイ奴になり下がるだろう。しかし、カブトムシ業界のリーダーだったヨシ君は、その後、地元のビックリマンブームの火付け役になったのだ。(戦う感じのが好きなのかな?)
いずれにせよ、華麗なるピボットだ。

当然ながら人間は、大体は飽きてきて、次の楽しいものを見付けるものだ。事業経営もそれで良いと思う。枯れた技術を水平展開だけ考える訳でなく、もう少し俯瞰で見つかる経営資産はあるはずだし、斜陽産業こそ埋もれた宝があると思っている。

どの業界でも、どんなビジネスでも、いつかはカブトムシ現象が起きる。
次のメインストリームは何か、という流れはアンテナを張っておいて、その中で、次どんなのやったら面白いかな?を常に考えて実行するのは、少年時代に立ち返るのも一考ではないかな。

 

まずは行動?

ちなみに、バレンタインチョコの数も二分していたヨシ君をライバル視していた僕は、ビックリマンに対抗して、ガムラツイストというシールを流行らせる為、なけなしのお小遣いを投じた。一旦は、ローカルブームの覇権を握るまでに至れたのだが、その後、ヨシ君は経済力を生かしてウルトラマンメダルを流行らせるという、また更に上をいく快挙を成し遂げたのだ。

そのメダルがコレクション欲をそそる、これまた、どこで見付けてきたんだ?というくらい最高のアイテムだった。完敗だ。その時には僕も負けを認め、ウルトラマンメダルに乗っかった。それが、敵対から友情の始まりとなり、僕が草野球チームを立ち上げたときには、ヨシ君と一緒にバッテリーを組んだ。

そして、親友まで昇格した。

めちゃくちゃ、社会の縮図だ。
経済力ある奴に逆らうと更に上をいかれるものだし、ライバル視していても、敵対するより友好関係を築く方が健全だ。そして、トレンドリーダーという人間は生まれ持った天性の資質があるものだ。

やっていることは30年経っても変わってない。
一歩目は、カブトムシでも、プラモデルでも、なんでも良いのだと思う。まずは、カジって、ハマるまでやってみるのが良い。毛嫌いして、否定から入ったら、何も始まらない。

火付け役になれなくても、いろいろカジり続けたら、どこかでポジションが見付かり、たまたまメインフレームに乗ることだってある。そして、その世界のカリスマ溢れるリーダーにも出会えるものだ。

「まずは行動を起こせ」等、大仰な言葉で発信する人たちがいるが、
意外とカブトムシにハマってみる、程度の小さなアクションで良いのだ。

 

最後に

現時点で、7歳と3歳の息子たちは、カブトムシにも、プラモデルにも全く興味を示していない。兄弟で、3歳時点で既に性格も関心事も、モノの見方も全く違うのには驚かされる。時代のせいだけでは無いだろう。

2人ともインターナショナルスクールに通っているのだが、大人でも回答に窮するような正解を求めない学習スタイルは気に入っている。(妻はフラストレーション溜まりまくっているようだが、、、)
穴埋め問題を誰かが作ってくれる世の中では無くなった今、トレンドリーダーになるか、そのカリスマを持っている人と共通言語で語れるコミュニケーション能力(言葉や言語、対話だけではない。)こそが、今後、育むべき重要なスキルであり、親が与えるべき環境なのだろうと思っている。

今日からタイは3連休。
偉そうに教育を語れるほど子育てに参加できていない反省もあるので、
この3連休は、思いっきり子供たちと過ごして、ミニ四駆でも作ってみようかな。
シラチャには、こんなところあるらしいので行ってみよう。

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